自然数の累乗の和の公式(2)
差分の続き*1
一昨日はなんとか計算方法を導きました.もうちょっと考えてみます.
累乗の和を求める多項式を求めているのですが,直接の差分をとったらどうなるでしょうか.
任意の自然数に対して,が成立するので,これは任意の実数に対して,,が成り立ちます*2.そこで,この関係式をで微分してみると,です.この式でをずらすと,です.したがって,
が任意ので成立するので,は定数です.
そこで,この定数をとおきます.
つまり,
です.
このを求めることで,
これでは計算できます.
のとき,*3.
のとき,
一方,今までの議論で,なので,となって,
のとき,
,なので,,,となって,,.よって,
のとき,
また,である.の係数比較を行って,,,であるので,(より)より,.
のとき,
また,である.
の係数比較を行って,,,,であるので,(より)より,.
のとき,
また,である.
の係数比較を行って,,
,,,であるので,(より)より,.
このように計算していけます.連立方程式をとく必要がありますが,計算そのものは今までで一番楽かもしれません.
「母関数」を使う
数列に対して,以下のようなベキ級数を考えます.ただし,数列は項から始まるとします.
上の式を数列の「母関数」,下の式を数列の「指数型母関数」といいます.そこで,数列としてを適用します.今までの議論において,分母に階乗が付くことが多かったので,指数型の母関数を使います(ただの母関数の方は使いません).
この関数をで微分します.このベキ級数の収束性や微分との順序交換はとりあえず気にしません.
であったので,
です.ここで,をずらしていことに注意してください.さらにとおくことで,
を得ます.さらに,とおくと,
となるので,です.
である一方,の定義より,.そして,なので,の定義より,.したがって,
同様に,である一方,の定義より,.そして,なので,の定義より,.したがって,
よって,
です.に代入することで,
であったので,の中にの情報がすべて詰まっていることになります*4.
逆に辿ってみる.
という関数を得ました.これをTaylor展開することを考えます.
ここで,はの多項式であることは指数関数の展開を考えれば分かります.そして差分をとると,
したがって,
です.また,初期条件も一致する*5ので,が分かります.
まだ終わらない・・
やっと母関数まできましたが,当初の目的の「一般解」にはまだ届かないのは,寄り道と冗長さと,複数の計算方法でしつこく同じものを求めてるせいですね.
あと一息で公式です.
ベルヌーイ多項式
いきなりですが,母関数を用いて以下のように定義されるベルヌーイ多項式というものがあります.
左辺の関数が,の母関数によく似ています.そこで,をで表現してみます.
さらに,これをベキ級数で表し,なので定数項が消えることに注意すれば
よって,係数を比較して,
これがいわゆる「自然数の累乗の和の公式」です.結局,ベルヌーイ多項式というわけのわからないもので表現してるので騙された感じはしますが,ベルヌーイ多項式はいろいろなところにでてくるものなので,共通知識として流通しているとみなしてよいでしょう.ですので,これを一般の公式としようというのです.
やっとこの定理を示すことができました.
*1:を考えるアイデアは,東京大学平成19年度「高校生のための金曜特別講座」(第四回2007年5月11日「関・ベルヌーイ数をめぐって」織田孝幸氏)によります.
*2:からも示せます
*3:というのが何だかわかりませんが,これは形式的に0としておきます.なのでどう定めても影響はないとみなせますが,と定義する根拠と考えられます.
*4:この関数を見つけるだけなら,を直接に代入して,和の順序を変えて等比数列の和の公式にしてしまえばよいです.
*5:は分母が0となって値がないようにみえますが,分母分子を展開すれば値が$x$であることが分かります.厳密にいうならば,この表記は原点を除いた点ではこの式で定め,原点ではとなる関数を表すということの略記ともみなせます.複素関数の言葉でば「原点は除去可能な特異点である」ということです.