最小値が0でないならば,実は最小値ではない
昨日,多項式関数の絶対値は複素平面全体で最小値を持つことを示しました.この最小値がであることを示します.これによって,最小値をとる複素数が存在する,つまり,の解の存在が示せます.
さて,の最小値をとして,としましょう.そして,複素数をとなるものとします.アイデアは,を「少し」動かすとの値を未満にできるということです.
「少し」動かすというのを,と表すことにします.複素数の絶対値が小さいものとすれば,確かに少し動いたことになります.を考えて,この式の展開をしてに関する昇べきに並べることにします.すると,に関する定数項はになるので,係数を適当に文字で表して,
と表せます.を考えます.この係数の中にはになるものがあるかもしれませんが,簡単のために,とすることにします*1.係数の絶対値 の最大値をとおくと
ここで,は,1未満であればよいのですが,十分小さいものとします.この仮定のもと,
が得られます.さらに,という不等式を考えます.これを解くと,となります.つまり,がこの条件を満たすくらい十分小さい絶対値のものだとすれば,を満たします.
ここで,
に戻ります.今までみてきたように,を十分小さくとると,
,とできます.
の値はから,複素数だけずれたものになります.は原点中心の半径の円周上の点であり,を必要ならばさらに絶対値が小さくなるようにとって,がその半径の円内に入るようにでき,さらに,での円の法線の上にあるようにの偏角を調整できます.であったので,からだけ移動した点は半径の円内に入ります(必要であれば,の絶対値をもっと小さくします).
以上のことより,は半径の円内(円周上ではない)の点となります.つまり[tex:$|f(c+\zeta)|
*1:一般の場合,つまり,となるようば場合も全く同様です.