複素平面上の関数は最小値をもつ

どこまでさかのぼればよいのかが問題ですが,

閉円板$\{z\in \mathbb{C} ~|~ |z|\le R\}$上で連続な関数は最大値・最小値をもつ

を土台にすることにします.大学一年生の最初の方で習う定理でしょうが,高校生でも納得できるものだと思います.これをつつきはじめると,あっという間に実数の定義とかになるので妥当なスタートポイントでしょう.

まず,すぐ前に証明したように,$|z|$が十分大きければ,$|f(z)|$も十分大きいのです.そこで,十分大きな円板を考えます.その円板上では,連続関数$G(z)=|f(z)|$は最小値をもちます.また,この円板の外では$G(z)$は十分大きいので,結局,円板上での最小値が複素平面全体での最小値になるといえます*1

まだまだ続きます.

*1:厳密には,以下のようになります.$|f(z)| \ge |a_n| |z|^{n-1}|M|$であって,$M$$\frac{a_k}{a_n}$の最大値でした.したがって,$M\ge\frac{a_0}{a_n}$です.つまり,円板の半径を上の証明で使った$(n+1)M$とすると,$|f(z)| \ge |a_n| |z|^{n-1}|M|\le |a_n||z|^{n-1} \left|\frac{a_0}{a_n}\right|\ge|a_0|$です.$|z|\ge1$であることも注意です.$f(0)=a_0$であることにも注意すれば,$0$が円板上の点で,円板上では,最小値は$a_0$以下,円板外では$|f(z)|$$a_0$以上です.つまり,円板上での最小値が全体での最小値です.