複素関数論での代数学の定理の証明

昨日,「代数学の基本定理」の証明云々を書きましたが,高校生に分かるレベルの証明を考えてみようかと思います.
まずは定理のそのものを.

代数学の基本定理
$f(z)=a_0+a_1z+a_2z^2+\cdots+a_nz^n$, $a_n\ne0$, $a_i \in \mathbb{C}$とする.このとき,方程式$f(z)=0$複素数を少なくとも一つ持つ

とりあえず,個人的に一番しっくりくる複素関数論ではもっとも一般的であろう証明を挙げてみます.極めて天下り的ですが,Liouvilleの定理を使えばほとんど自明です.大抵の複素関数論の基本の教科書には出てますね.

Liouvilleの定理
複素平面全体で正則な関数が有界であるならば,それは定数関数である.

この定理そのものを証明するにはさらに別の定理が必要ですし,そもそも「有界」とか「正則な関数」というところから始めないと,高校生向けにはなりえません.が,とりあえず,先に進んでしまいましょう.

関数$f(z)=a_0+a_1z+a_2z^2+\cdots+a_nz^n$は「複素平面全体で正則」な関数です.そこで,$f(z)$は0にはならないと仮定(つまり,解を持たないと仮定)して,関数$1/f(z)$を考えます.この関数は仮定より,複素平面全体で正則です.また,$z\to\infty$とすれば$|1/f(z)|\to0$*1となるので,$1/f(z)$複素平面全体で有界です.

したがって,Liouvilleの定理より,関数$1/f(z)$は定数となって,$f(z)$も定数となりますが,これは明らかに矛盾.したがって,方程式$f(z)=0$は解を持つ.

大学の複素関数論の流れならこれで決定ですが・・・数学ガールの世界では絶対にアウトです.なんとかLiouvilleの定理を多項式限定で示せばよい(間違いですね。。。)のでしょうが,どうしてもCauchyの積分定理が出てきそうなので,この方向性は駄目ですね.

ということで,困ったときのwikipedia.それによると,「0ではない最小値を$|f(z)|$がもったならば,$z$を少しずらせば最小値よりも小さな値を$|f(z)|$がとることができて矛盾」.なるほど,この方針で考えてみよう.

(続く)

*1:追記(2007/07/03) 実数では自明ですが,複素数の場合はあんまり自明ではないかもしれません.